「令和版 物流技術ハンドブック」の紹介

はじめに
NX総合研究所は物流技術の観点から実務に直結する情報やデータをハンドブックという形でまとめた「令和版 物流技術ハンドブック」を発行しました。本書の全体総括者が出版に至った背景の説明とポイントについて解説します。
出版の背景
物流は調達・製造・販売のサプライチェーンの中でこれまではコストセンターとして取り扱われていましたが、昨今では多くの企業において物流は「利益・価値を生み出す源泉のプロフィット・センター」という位置付けで見直されています。
プロフィット・センターとしての物流に着目した企業としてアマゾンがあります。利益・価値を生み出すという点をわかりやすく説明すると、eコマースを中心とした末端の物流では以前は消費者がお店に行って商品を買っていましたが、今では自宅にいながら買い物ができて商品が自宅に届くようになりました。eコマース物流は消費者が店舗まで行って買い物して帰ってくる時間を省いてその時間を他の活動に充てることができるという価値を提供しています。
プロフィット・センターとして注目を集めている物流において、物流の技術面がどのように影響してきたのかということを当社はずっと研究してきました。2002年に「物流技術ハンドブック」というA4サイズの冊子を発刊しましたが、発刊から20年以上経ちます。陳腐化した情報をすべて更新し、この20年間に新しく開発された技術や製品などを追加して作成したのが「令和版 物流技術ハンドブック」です。2002年のハンドブックはA4サイズでしたが、物流現場に持ち出して見たいときにすぐに確認できる小さいサイズの方がいいということで今回はA5サイズのペーパーバック版にしています。
本書は物流の専門家だけでなく、物流以外の部門から新たに物流部門に配属された方、物流のことを勉強している学生が物流技術について学ぶための基礎的な情報と物流現場にいる方が現場ですぐに使える専門的な情報を整理した内容で、図や表をふんだんに掲載してパッと見て理解できる形式で作成しました。
図表①:「令和版 物流技術ハンドブック」発刊経緯
「令和版 物流技術ハンドブック」の概要
本書の概要を説明します。20章全体を章立てで見ていきますと、1章から4章までが経営に関する章で物流にまつわる資産管理・費用・原価・保険・リースについて詳しく解説しています。5章から9章まではトラックを中心とした車両技術に関する情報をまとめました。
図表②:「令和版 物流技術ハンドブック」の概要
車種区分と車種の定義、鉄道コンテナ用車両、海上コンテナ用車両などについて一通り紹介しており、どのような種類のコンテナ用車両があるのかが一目で分かるイラスト、テールゲートリフタと呼ばれる貨物昇降装置について各メーカーから得た情報をまとめた図も掲載しています。
図表③:「コンテナ種別車両」の比較図(物流技術ハンドブックから抜粋)
図表④:テールゲートリフタの種類と製品名(物流技術ハンドブックから抜粋)
10章の「フォークリフト」ではフォークリフトの種類とアタッチメントの名称を図解。11章は「コンテナ」、12章は「パレット」、13章は「マテハン機器」ですが、14章に20年前にはなかった「物流におけるロボット」の章を追加しています。省人化・自動化のためのロボット導入が進んでいる現状を踏まえてAGV(Automated Guided Vehicle:自動搬送機)、AMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行搬送ロボット)、GTP 型(Goods to Person:ロボットやシステムによりピッキング作業者のところまでピッキング対象物を運ぶシステム)の自動倉庫や棚搬送型ロボット、ピッキングロボット、パレタイズロボットなどの最新マテハン機器を写真入りで解説しています。
図表⑤: GTP 型自動倉庫と棚搬送のイメージ写真(物流技術ハンドブックから抜粋)
15章「荷姿・輸送環境」、 16 章「積み付け・荷役作業等」、 17章「廃棄物」、18章「貨物の荷扱い等の情報」、19章「環境関連データ」では物流に関する様々な項目の中から物流現場ですぐに確認したいと思われる情報を取捨選択して取りまとめました。
最後の 20 章の「附録」は物流に関する国際単位(長さ、面積、容積、重量、速度、温度、照度など)と換算表を記載しており、梱包資材の強度計算などに活用できます。
おわりに
「令和版 物流技術ハンドブック」はNX総合研究所が蓄積してきた情報を現役の物流コンサルタントおよび物流実務経験者が整理したものに加え、世間一般で汎用的に使われる物流技術の基礎知識となる情報をまとめたものです。物流担当者、 SCM 実務者の知識の整理、物流現場で必要なチェック事項を多岐にわたって記載しており、ナレッジ補強のための知識や現場ですぐに確認したい情報なども幅広く網羅しています。本書が物流高度化に向けた一助となることを切に願っています。
(この記事は、2025年4月21日時点の状況をもとに書かれました。)
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