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貨物自動車の基本的盗難防止対策~ 減少しても年間1,000件近い盗難が発生 ~

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はじめに

日々、様々な事故や事件がネット、新聞、テレビなどで報道されていますが、かなりの頻度で見聞きする事件の一つに自動車の盗難事件があります。警察庁や一般社団法人日本損害保険協会は、車名別盗難台数も公表しており、一定の車種は1年間で数百台といった単位で盗難にあっているということで、しばしば注目を集めています。自動車の盗難というと、SUV、ワンボックスカー、セダンなどの人気車種、いわゆる乗用自動車をイメージする人も少なくないかと思います。しかし、物流、特に輸配送業務に欠かすことができない貨物自動車の盗難も年間で1,000台近く発生しています。貨物自動車と盗難、すぐに結びつかないかもしれませんが、実際に事件が発生しており、件数も看過できる数ではないと考えます。
本稿では、自動車全体の盗難件数の推移、貨物自動車盗難件数の推移を確認したうえで、自動車窃盗の一般的な手口、貨物自動車の車庫特有の立地条件を踏まえつつ、貨物自動車の盗難防止対策の基本について改めて考えてみたいと思います。

自動車盗難件数の推移

貨物自動車の盗難件数に触れる前に令和6年の自動車盗難の発生状況を確認しておきたいと思います。警察庁生活安全企画課の資料「自動車盗難等の発生状況等について(令和7年3月)」によると、令和6年の自動車盗の認知件数は、平成15年(2003年)のピーク時の6万4,223件から大幅に減少して6,080件と発表されています。これは、ピーク時から1割以下にまで減少していることになります。そして、検挙率については、令和6年は 44.1 パーセントで、約4割が検挙されているとのことです。

警察庁生活安全企画課 自動車盗難等の発生状況等について(令和7年3月)

出所: 「警察庁生活安全企画課 自動車盗難等の発生状況等について(令和7年3月)」掲載データより作成

このように、自動車の盗難認知件数は、全体としては、ここ約20年で減少トレンドにあるものの、令和6年は、前年より約300件増加しており、また年間で6,000件以上の発生があることを踏まえると、依然として高い盗難リスクがあることは、否定できないと考えられます。
また、同資料では、自動車盗難の発生が多い都道府県についても紹介されています。令和6年の自動車盗の都道府県別認知件数では、認知件数の上位5県(愛知県、埼玉県、千葉県、茨城県、神奈川県)で全体の 56.8 パーセントを占めているということでした。そして、自動車盗に占める「キーあり」・「キーなし」(※)の比率では、令和6年度は キーなしの比率が75.2%となっており、平成15年以降も70 パーセント台で推移していることから、概ね4台に3台がキーなしの状態で被害に遭っていると同資料では報告されています。

警察庁生活安全企画課 自動車盗難等の発生状況等について(令和7年3月)

出所: 「警察庁生活安全企画課 自動車盗難等の発生状況等について(令和7年3月)」掲載データより作成

※「キーあり」とは、エンジンキーがイグニッションスイッチに差し込まれ、又は運転席若しくはその周辺に放置されていて被害に遭ったもので、「キーなし」とは、「キーあり」以外のものをいう。

貨物自動車の盗難件数

警察庁の統計資料「令和6年の犯罪」によると、令和6年の貨物自動車窃盗の認知件数は、944件にのぼっています。前項の自動車盗難件数と同様に一定の時期まで大幅な減少傾向が見られましたが、令和3年からその傾向が薄れて、令和4年から増加に転じて1,000件を超え、令和6年に減少するといった動きになっています。貨物自動車が年間で900~1,000件も窃盗に合うということは、単純計算で1日に約2.5件程度の盗難が発生していることになり、俄かには、信じられない件数であると感じます。貨物自動車の中でもトラックは目立つため、一般的に窃盗向きとは考えづらく、窃盗犯が避けるべき存在のように思えます。
しかしながら、これらは事実であり、発生件数には差があるものの、盗難リスクがあるという点においては、盗難車名ランキングで上位に入るような人気車種と同様であり、基本的な盗難防止対策は講じておく必要があると考えます。

「警察庁統計 年間の犯罪」掲載各年データ

出所: 「警察庁統計 年間の犯罪」掲載各年データより作成

ちなみに、2025年10月21日15時配信の讀賣新聞オンラインには、「福岡県内でトラックを盗んでウガンダに不正に輸出しようとした疑い…ウガンダ人の男5人逮捕」という見出しの記事が掲載されています。それによると、5人は7月、盗んだトラックを車台番号を偽ってウガンダに不正に輸出しようとしたなどとして、福岡県警がウガンダ人の男5人を窃盗や関税法違反の疑いで逮捕したということです。同県内では昨秋以降、トラックの窃盗事件が約10件発生し、被害額は計約1,000万円に上っており、県警は男らが同様の手口で窃盗と不正輸出を繰り返したとみているといった内容です。
日本のメーカーのトラックは、品質や耐久性が高く、多少古い型式の車でも、海外、特に東南アジアやアフリカなどで人気があると耳にしたことがあります。警察や税関が盗難車の不正輸出の防止に力を入れている中でも、こうした犯罪が後を絶たない現状を踏まえると、自衛対策の重要性がより高まっていると強く感じます。

讀賣新聞オンライン記事のリンク」(2026年1月13日閲覧)」

自動車窃盗の一般的手口

盗難防止対策を講じるにあたり、犯人がどんな手口で自動車を盗み出すのかについて、確認しておくことも有用と考えますので、ここでは、その主なものを紹介したいと思います。
なお、窃盗の手口としては、乗用自動車、貨物自動車とも共通するものがほとんどであると考えられます。

【自動車窃盗の主な手口】
➤ ドアの施錠がなされていない車両に侵入して盗む。
➤ 窓の隙間から針金等を差し込んでドアを解錠し、車両に侵入して盗む。
➤ ハンマー等で車のガラスを破壊し、車両に侵入し盗む。
➤ 工具等を使ってドアを解錠し、車両に侵入して盗む。
➤ 車体にマグネット等で隠しているスペアキーを探し出して盗む。
➤ エンジンキーがイグニッションスイッチに差し込まれ、又は車内に放置された状態から盗む。
➤ レッカー、けん引車で車両を丸ごと盗む。
➤ リレーアタックやCANインベーダーと言われる、特殊な機器を使用して盗む。
➤ キープログラマー等の特殊な機器を用いて鍵を複製して盗む。

貨物自動車の車庫特有の立地条件

トラックをはじめとする貨物自動車の車庫は、港湾地域や工業団地内、あるいは郊外の倉庫・流通センター周辺に設置されることが多いという特徴があります。こういった場所は、人通りが少なく、特に夜間は、極端に人目が少なくなることから、犯罪者にとっては、犯行が行いやすい環境が整っているという見方もできます。
貨物自動車の盗難を防ぐ上で、犯罪者が犯行を行いづらいような場所に車庫を設けることは非常に重要です。なるべく、外から車庫スペースを一望できるような場所で、夜間は照明で明るくしておくことで、犯罪者にとって好ましくない環境を作ることができます。

基本的な盗難防止対策

貨物自動車の盗難を100%防止する手段は、残念ながら無いというのが現状です。しかし、複数の対策を組み合わせて行うことで、かなりの防止効果が期待できますので、その基本的かつ体表的なものを紹介いたします。

車両を離れる際の確実なドアロック

犯人は、運転者が車両から離れる時を待っていることも考えられます。基本中の基本ですが、短時間であっても車両を離れる際は、完全に窓を閉め、エンジンキーを抜いてドアロックをします。当然ですが、車内にエンジンキーを放置したり、車外に隠し置きをしたりすることは避ける必要があります。

車庫などの環境整備や安全性が高いスペースへの駐車

車庫など日常的に車両を駐車する場所は極力明るく、見通しを良くすると同時に、防犯カメラやセンサーライトを設置するなど駐車環境、特に夜間の環境を整備することで犯罪の抑止力を高めることが期待できます。また、会社施設以外に駐車する際も、なるべく見通しが良く、防犯カメラや照明設備等、防犯対策が講じられているスペースを選ぶようにします。

車庫等の敷地内への侵入防止

門扉をチェーンロック等で固定し、犯罪者が簡単に敷地内に侵入するのを防ぐ方法です。当然ですが、門扉自体や施錠に使用するチェーンにも一定の強度が求められると同時に、門扉を簡単に乗り越えられないような高さにしたり、上部に有刺鉄線状のものを設置したりするなどの工夫も必要になります。

出典:茨城県警察ホームページ「防げ!トラック盗難」

トラック等の車両の固定

アンカーベースなどを後部車輪下にセットし、板サスなどにチェーンを通して固定し、車両自体を簡単に動かすことができないようにする方法です。アンカーはなるべく犯罪者から見える場所に設置し、見た目でも威圧すると効果的と言われています。これは、場所を選ばずにどこでも設置でき、車両を車庫の支柱や建物に固定することもできるので、かなり効果的と考えられます。
また、もう少し簡易な手段として、タイヤに装着してタイヤ自体を固定(動かせなく)する「タイヤロック」を使用する方法もあります。

出典:茨城県警察ホームページ「防げ!トラック盗難」

出典:警視庁ホームページ「『自動車盗』の防犯対策」

ハンドルロックの使用

トラックなどのハンドルをハンドルロックという器具で固定する非常に代表的な方法です。あまり簡易なものでは、ハンドルを切られ(動かされ)、その際に外されてしまうことがあるため、ハンドルを切られても簡単に外れないタイプが有用です。

出典:茨城県警察ホームページ「防げ!トラック盗難」

警報装置の設置

ガラスの破壊やドアのこじ開け等の衝撃や振動にセンサーが反応して、警報音を発することで周囲に異常を知らせる警報装置の設置もセキュリティーを高めます。警報装置には様々な種類や機能を搭載したものがあります。

出典:警視庁ホームページ「『自動車盗』の防犯対策」

イモビライザーの活用

イモビライザーとは、エンジンキーに内蔵された電子チップから発信されるIDコードと車両本体内のコントローラーのIDコードとをコンピュータで照合し、IDコードが一致する正規のキーと判定されないとエンジンが掛からない盗難防止装置です。キー自体の機能と電子的な暗号のダブルロックで車両を盗難から守るため、かなりの効果が期待できます。

【イモビライザーのイメージ】

イモビライザーのイメージ

出典:警視庁ホームページ「『自動車盗』の防犯対策」

隠しスイッチの取り付け

隠しスイッチとは、車両本体に最初から取り付けられている純正のエンジンキーとは別にもう一つすぐ見つからないような場所にスイッチを取り付ける方法です。純正スイッチと隠しスイッチの両方のエンジンキー2つを作動させなければ、エンジンが始動しない仕組みで、隠しスイッチの存在がわからなければ、車両に侵入はできても、動かすことができないため、盗難を防ぐことができる仕組みです。

CAN インベーダーへの対策

CAN インベーダーは、車両窃盗の一つの手口です。これは特殊な機器を使用して、車両に設置された通信ライン(配線)に直接アクセスすることで、車両に対してあたかも正規のキーであるかのような認識を与えて誤作動を起こさせ、ドアロックを解除し、エンジンを始動させるといった非常に厄介な手口です。この手口に対して万全な対策はなく、セキュリティー対策との間であたかも“イタチごっこ”のような鬩ぎあいの様相を呈しているのが実情です。ただ、これまでに紹介した車両固定方法やタイヤロック、ハンドルロックなどの対策を組み合わせることで、盗難防止効果は高まると考えられます。

GPS追跡装置の設置

この方法は、万が一、車両が盗難被害にあった場合の対策になります。車両にGPS追跡装置を取り付けておくことで、盗難発生後のリアルタイムで車両の位置を追跡することができ、車両を取り返せる可能性が高まります。

おわりに(トラックのバッテリー盗難などにも注意)

冒頭で紹介したとおり、乗用自動車を含めて貨物自動車の盗難件数は減少傾向にあるものの、年間で1,000件近く貨自動車の盗難が発生しています。特に大型トラックは、新車価格も2,000万円を超えるものもあり、自動車窃盗犯にとって、盗む価値が高い車両の一つかもしれません。しかし、物流事業者、特に輸配送業務を行う事業者にとっては、車両盗難は死活問題にも至る深刻な損害をもたらします。
車両の盗難対策に“絶対”というものはありません。しかし、犯行手口を知り、対策を一つひとつ組み合わせることで、大きな盗難防止の効果が期待できるものと考えます。
最近では、車両自体の盗難だけでなく、自動車の部品の盗難も多く発生しています。特にナンバープレートの被害が多いとのことですが、トラックの場合、バッテリーがむき出しの状態で取り付けられていることから、盗まれやすいとの指摘もあります。
いずれにしても、貨物自動車、とりわけ自社の車両は、その部品も含めて盗難被害に合うことはないであろうという根拠ない楽観的な意識を一度リセットし、盗難対策を確実に積み上げていくことが重要であると考えます。また同時に、ドライバーなどの従業員への意識改革と盗難対策の基本の徹底指導もあわせて行っていく必要もあると考えます。防止対策は、日々実施しなければなりませんので、面倒に感じることもあるかと思いますが、車両を守るために労を惜しまず地道に行うことが大切です。
最後に、こういった犯罪が無くなり、対策が不要になることを切に願わずにはいられません。

出典:茨城県警察ホームページ「茨城県は自動車盗難多発県!」複数対策啓発画像

(この記事は2026年1月13日時点の状況を基に書かれました。)

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