作業時間計測ツール「じょぶたん」は製造業界でどのように活用されているか?
はじめに
製造業界では人手不足への対応が求められる中、現場の生産性向上のための業務改善に日々取り組んでいます。業務改善において製造工程ごとの正確な作業時間の把握は工程管理や原価計算の精度を高めるうえで特に重要な要素です。しかし手書きの作業日報による作業時間の記録では、現場作業者の記載漏れがあったり、事務作業者のパソコンへの入力・集計作業に手間がかかります。またビデオ撮影や観測者を立ててストップウォッチで一定期間の複数の作業者の作業時間を計測するワークサンプリングは人手の足りない繁忙期に実施することが難しく、正確な標準時間(スタンダードタイム)の算出ができないという課題があります。
そういった課題解決のためにデジタルツールの導入を進める企業が増えてきました。スマートフォン・タブレット・スマートウォッチを活用した作業時間計測ツール「じょぶたん」は簡単に作業時間を記録して、即時にデータ分析することができるデジタルツールです。本稿では製造業界での「じょぶたん」の活用事例を紹介します。
菊正宗酒造様: 酒造りの生産性向上を目指した改善活動で活用!
最初に紹介するのは江戸時代の万治2年(1659年)創業の老舗の酒造会社である菊正宗酒造様です。菊正宗酒造様では生産部と製品部があり、酒造りをする生産部で作ったお酒をタンクローリーで移動して瓶詰やパック詰めにして製品化するのが製品部です。製品部はライン生産をしていることもあり、作業時間を把握しやすいのですが、生産部は機械が稼働している時間、かかった作業時間を手書きの作業日報で記録している班と記録していない班がありました。生産部の正確な現状把握をするために「原料」「発酵」「圧搾」「貯蔵庫」という4つの作業工程で「じょぶたん」で作業時間を計測しました。

酒造りは各工程にかかる日数が決まっています。効率化して短期間でたくさんのお酒を造ることはできません。生産性向上と言ってもたくさんの量を早く作るのが目的ではなく、生産性向上により各工程にかかる人員を削減して、その作業に従事する必要がなくなった社員にはもっと付加価値の高い別の作業に従事してもらうのが目的です。
「じょぶたん」には作業者が特定の作業項目のボタンを押した時に「数量」や「メモ」を入力させる機能があります。その機能を使って投入した原料名と数量を入力すると作業時間と実績数値を同時に記録されるので、原料別の生産性を算出することができました。
図① 「じょぶたん」の数量・メモの入力操作画面
8階建ての工場の一番上の8階で作業をしている「原料」の班はこれまでの階下の班がどんな作業をしているのかわかっていなかったそうですが、計測後に各班の計測データを共有して、これまでブラックボックス化していた各班の作業内容が分かり合えたのはよかったとのことです。
菊正宗酒造様の導入事例の詳細はこちらでご覧いただけます。
SUMCO様: 標準時間算出のためのワークサンプリングの代替として利用!
世界シェア約30%の半導体用シリコンウェーハ製造会社であるSUMCO様の事例を紹介します。SUMCO様はこれまで全国の各工場の作業現場で工程ごとの標準時間を算出するために、観察者を立てたワークサンプリングを実施していました。しかし工場のフル生産時や工程に変化が生じた時等、容易にワークサンプリングが実施できないという課題があり、ワークサンプリングの代替のために、観察者なしで作業時間がかんたんに計測できる「じょぶたん」を導入しました。

工場が3交替勤務の24時間操業ということもあり、ワークサンプリングの実施には現場の規模によって人数は変わりますが、1班から1名、3班で交替作業するため最低3名の観察者が必要でした。時間計測はランダム時刻表を使った不定期な時間間隔で、各工程の作業内容を記録します。ワークサンプリングは工程によっては3ヵ月もかかる場合があり、観察者の負担がかなり大きく、特に工場のフル稼働時はワークサンプリングをしたくてもできません。閑散期の観測では余裕時間が発生していることもあり、標準時間として考える場合には測定精度に問題があります。工程の変化や新プロセスが導入されてもタイムリーなワークサンプリングができず、該当工程だけの作業時間計測による標準時間設定になっているという課題がありました。
また観測者はワークサンプリング前にどのようなルートで現場を回るのか、ここにいたら多くのオペレーターをまんべんなく見られるとか、観測する場所なども事前調整しておく必要があり、紙とペンを持って記録したデータをエクセル入力する手間もかなりかかっていました。
こういった課題を解決するために「じょぶたん」の利用を開始しました。「じょぶたん」は作業者一人一人がスマートフォンを押していくだけで作業時間が記録できるので観察者が不要、実施したい時にタイムリーに計測できる上に、データ集計も楽になったとのことです。
クリーンルームでの「じょぶたん」利用現場
ワークサンプリングではデータの個数の比率で標準時間を算出しますが、「じょぶたん」は計測した時間データからすぐに標準時間が算出できます。標準時間の算出だけでなく、付帯作業、準備作業で時間がかかっている作業を把握して、作業時間削減のための自動化を検討するのにも役立っているとのことです。
SUMCO様は全国の工場で不定期に「じょぶたん」を活用した作業時間計測を実施して業務改善に取り組んでいます。
SUMCO様の導入事例の詳細はこちらでご覧いただけます。
おわりに
本稿では文字数の関係で紹介できませんでしたが、「じょぶたん」は他にも多くの製造現場でご利用を頂いています。他の事例につきましては「じょぶたん」のHPをご覧下さい。
多くの製造会社様よりIE手法(インダストリアル・エンジニアリング:人とモノと設備の動きを細かく見る技術)の「稼働分析」の一般的な作業分類と同じテンプレートを作成して欲しいというご要望を頂いて、「稼働分析」のテンプレートを「じょぶたん」に標準装備しました。
「稼働分析」のテンプレートの作業レベル1は「稼働」と「余裕」の2つに分類されます。「稼働」というのが稼げる作業です。このテンプレートの利用することで大分類の時間比率から稼働率を簡単に算出できます。「稼働」は「主体作業」と「付帯作業」に分かれて、「主体作業」は「主作業」と「付随作業」に分類されます。「主作業」というのは材料・部品の変形・変質に直接寄与する作業ということで加工や組立作業などの作業項目がここに分類されます。作業項目名は自由に設定することが可能です。
図➁ 稼働分析のテンプレートの作業レベル1、2、3の説明
「じょぶたん」による作業時間計測によって、工程別・作業内容別・従業員別にデータを集計できます。観測者を立てたワークサンプリングよりも簡単に低コストで正確な標準時間を算出、課題を洗い出し、生産性向上のための具体的な対策を実施することができます。
本稿を読んで「じょぶたん」に興味を持たれた方はぜひ当社のHPよりお問い合わせ下さい。オンライン会議システム(Teams/Zoom)で詳細説明をいたします。
(この記事は、2025年9月29日時点の状況をもとに書かれました。)
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