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組織教育を考える:物流現場と文学作品から思うこと!

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シニア・コンサルタント

吉岡 隆

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この年末年始に当たり、物流センター訪問と伝記本を読むことから、教育や組織の在り方を深く考えさせられました。

組織教育を考える際に、優れた人間というものは何が優れているかということを考えると、知見や技能が優れているだけではなく、自負心があるということではないでしょうか。従って、人というのは色々な事はできたとしても、自負心がないならば本当に優れることにはならないのではないでしょうか。教育とは、その人の自負心を自覚させることにあるのではないかと思います。

物流センター訪問

私は昨年末に差し掛かる前に、ある研修の現場スタディで、首都圏のある物流センターを訪ねる機会を頂きました。物流センター訪問で毎回感じることは、各センターにおける業務推進上の規律正しい姿勢ですが、今回訪問のセンターもその印象通りでした。到着後、該センターのリーダー的な存在の方から、施設概要(延べ床面積、荷主構成、人員構成・配置、等)や業務全体の流れ(入荷~入庫/保管管理~ピッキング~検品~出荷)の解説と、限られた範囲でしたが作業状況(DPS:Digital Picking System等の取り扱い)を実際の場で説明して頂きました。その方からは終始、確認改善業務をもって該センターの整流化を行い顧客(荷主・届け先)要望に応える自負的な責任感が漲っていました。勿論、そのセンターのパフォーマンスは高く評価されています。

当日の該センター訪問の同行者は私以外にも数名在していましたので、説明して下さった方の取り組み姿勢に感銘した私はタイミングを計って、業務の流れ解説に関する質問よりも、「その生き生きとした責任感溢れる姿勢の源」をお聞きしました。その方からの返答を端的に言うならば、「今までの諸先輩の方からの教えを実践しているだけです。正しい業務推進を考えれば(手を抜かず)、評価され利益は後から付いてくる!と教えて頂き、それを自負して進めています!」とのことでした。素晴らしい先輩指導者が存在し、その方に親身に接して下さっていたのだなあと私はただただ感服した限りです。

伝記本を読んで

一方、年末年始休暇に、昨今の物価高・円安で海外旅行から極めて縁遠くなった私は、かなり前に読んだ文学作品でイタリア・ルネサンスを楽しもうとアービング・ストーンという米国人が書いて邦訳された、ミケランジェロの伝記を読み返すことにしました。個人的な話で恐縮ですが、本書は35年以上前に大学の指導教授に薦められた書で、経済学部を卒業した身ではありますが、過去を振り返ると教えや触発を受けたのは経済や経営の書からよりもむしろ、文学の方が非常に多い記憶です。

書の概略は、ミケランジェロの画才をもってしても、自身が自負心というものを持っていなかったら、又は持っていた自負心を失はしめたら、あの素晴らしい作品の数々は出来なかったろうと思います。では誰(教育者)が彼のその自負心を保証したか。突き詰めるとパトロンであったメディチ家、その全盛期に当主であったロレンツオ(彼の評価は分かれますが)ではないかと思うのです。彼は、あまたいる少年の中から、芸術の才能のある何人かを自分の館に連れてきては、芸術三昧の生活を送らせていました。全員一流の画家になり作品を残したわけではないのですが、中の一人としてミケランジェロがいたのです。

その本の中での印象深い部分で、教育とかリーダーシップとか、あるいは勤労意欲というようなテーマが上ると頭の中によみがえってくるのですが、ある時、ロレンツオから見て非常に納得行く作品をミケランジェロが作り上げ、ロレンツオはミケランジェロを呼んで、「よくやった、良い作品だ」といってお金を与えました。その時、ミケランジェロは非常に不快な顔をして「私は、あなたにこの作品を買ってもらおうと思ってつくったわけではないのです」と言いました。しかし、それを聞いて普通の人なら「むっと」して「何を言っているのだ、俺が食べさせてやってお前の才能を磨いてやったのに、傲慢なことを言うな」というところでしょう。しかし、ミケランジェロは、ロレンツオという素晴らしい人に恵まれました。ロレンツオはにこやかに彼をたしなめて「ミケランジェロ、誤解をするのではない。俺は、お前の才能を買ってこの家に連れてきて、お前のその芸術の才能を伸ばすように精進させてきた。これからもお前の才能は無限に伸びて行くのだ。そのためには、作品ばかりをつくっていてはダメだ。世界には優れた芸術家がたくさんいる。お前は旅をして、そうした優れた芸術家に会い、その作品を見て回る必要がある。しかし、お前に旅をして回るお金があるのか。このお金はお前の作品を買った代価ではないのだ。俺が尊敬するお前の才能に対するささやかな贈り物だよ」と言ったとき、その時初めて、ミケランジェロは反省するのです。「ロレンツオ様の深い気持ちに対して自分はなんたる失礼な言葉を言ったのか」と。そしてミケランジェロは、ロレンツオの気持ちに深く感謝しながらお金を受け取って自分の家に帰って行くという部分があります。すばらしいくだりと思いませんか。


私は、給料とか賃金というものは本来そういうものだと思います。人間には生活がありますから、当然お金は必要です。しかし、働くということは、お金を儲けるためだけに働くのではないのです。働くということは、働くことによって社会規範を身に着け自分の個性が発揮できそれが伸びて行くから働いているのであって、その働いた結果としてお金はついてくるという考えで本来働くべきではないかと思います。

今回の物流センター訪問での経緯、そして、この文学作品の内容、とても近しい話(人材育成、自負心、良きメンター指導者)ではないでしょうか!

さて、それでは我々の中で、そうしたスタンスを持った人(教育者)がどのくらい存在するでしょうか!おそらく教育制度設計や給与管理の専門家はいるでしょうが、そういう人の中から教育とは何か、給与とは何かという話を聞くことがあるでしょうか!教育制度設計であろうと、人事管理であろうと、マーケティング戦略であろうと、対象は、顧客であろうと、社員であろうと人間です。だからその仕事に従事する人には、人間としての社員とか人間としての顧客に対する哲学といったものがなければならないのではないでしょうか。

そういう意味で、根底に哲学とか理念とかが失われてしまって、例えば教育制度だけが残ってしまったとき、組織というものは全く「味も素っ気もないもの」になって、人間を縛りつけるようになります。一人々の人間というものは、いつまでも自分を「生き生きみずみずしく」保っていたいのに、「味もそっけもない」組織の中で「生き生きみずみずしさ」を失うと、立ち枯れてしまうわけです。

我々自身も共通の理念を基に、教育を含む各種の組織体系を構築し、生き生きみずみずしさを保った組織体を目指してゆきたいと思います。特に教育においては、人に自負心を自覚させ生き生きと業務推進ができる仕立てを考えることが、重要ではないかと思います。

「物流人材育成・SCM教育ページ」はこちら

(この記事は2026年1月6日時点の状況をもとに書かれました。)

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