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トラックドライバー不足を省エネデータで試算してみる

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ドライバー不足の懸念などから、荷主にとって新たな法規制となる「改正物流効率化法」への対応が必要になってきていますが、この改正法は、20年前、2006年から始まった「改正省エネ法荷主に係る措置」に酷似しています。要は、物流効率化と輸送の省エネは取組内容が似ているとともに、評価指標も共通している部分があるということを表しています。
「改正物流効率化法」は2026年度から本格施行となりますので、ドライバー不足を評価する指標データはこれから明らかになってきます。従って、現時点で確認できるデータはないので、「改正物流効率化法」において評価指標のひとつとなる『積載効率』を、ほぼ同等の評価指標となりうる「改正省エネ法荷主に係る措置」の『エネルギー消費原単位』で代替して、ごく限られたデータとなってしまい恐縮ですが、ドライバー不足と紐付けて考えてみたいと思います。

1.「改正物流効率化法」と「改正省エネ法荷主に係る措置」の主な規制内容の整理

最初に、「改正物流効率化法」と「改正省エネ法荷主に係る措置」が似ていることを確認します。
荷主の定義や文言そのものが、法律で異なるなどの違いはありますが、多くの点で共通している内容が見られます。

さらに、国が定める判断基準の概要を見ると、モーダルシフトやエコドライブ取組支援などをのぞき、同じような取組内容が示されています。

2.トラックの積載率とエネルギー消費原単位は連動

ここからが、本題となりますが、トラックの積載率の向上はエネルギー消費原単位の向上につながることは、省エネ法告示「貨物輸送事業者に行わせる貨物の輸送に係るエネルギーの使用量の算定の方法」からも明らかになっています。
合わせて、サプライチェーンの段階で見ると川上から川下になるにつれて、エネルギー消費原単位が大きくなること=輸送効率が悪くなることが示されています。この要因として、サプライチェーンの段階で使用されるトラックの最大積載重量の違いが推測されます。省エネ法の業界別のエネルギー消費原単位(貨物輸送量あたりの平均エネルギー使用量)と告示の数値を比較すると下記のとおりとなります。(注:左下の図の卸売業には石油元売が含まれるため、製造業(素材系)に近いと推測されます。)

図. 特定荷主の貨物輸送量あたりの平均エネルギー使用量(主要業種:原油換算)と改良トンキロ法による数値の比較

図.サプライチェーンの段階とエネルギー消費原単位のイメージ

小売業の原単位が良くないのは、コンビニに代表されるように、多品種少量販売を実現するために、小ロット多頻度の輸送を実施したための結果であり、労働生産性が低いとされ改善が求められる一方、個人的には、来日される方がコンビニに感動されることは誇らしくもあり、今後も継続してほしい日本の文化のひとつではないかと思います。そう考えると、小売業の物流を担うドライバーは、今後も頑張ってもらうしかないか…。と思うのです。
そんなことを業務でデータハンドリングしながら考えていると、ふと、ちまたの「ブラックフライデー」で、うちにも嫁が注文した商品が何回か届いたことを思い出します。ニュースでは、ヤマト運輸や佐川急便が「ブラックフライデー」で遅延が発生していることを伝えています。
そこで、最近のECの発展で、ラストワンマイルの配送にかかる負荷がドライバー不足につながっているのではないかという仮説が生まれます。ECの増大は、サプライチェーンの最も川下に位置する個人宅への生産性の低い輸送が増えることにつながるからです。これまで物流業界で長年コンサルタントとして従事してきた私の知見(省エネ法の報告データなど)で、この仮説を検証してみましょう。

3.温室効果ガス排出量の公表制度のデータからの試算

環境省の「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」において、特定荷主が省エネ法で報告した実績報告書のデータが、CO2排出量として公表されています。
特定荷主の最新(2023年度)の結果を見ると、上位5社は下記のとおりとなっており、2番目に排出量の多い事業者として『アマゾンジャパン合同会社』(以下、「アマゾン」という)が報告されています。まさに、ECの代表格ですので、このCO2排出量から毎日必要なドライバーの人数の算出を試みたいと思います。

◎試算は下記の手順で行いました。
・ラストワンマイルの配送を対象としたドライバー数を試算
・ECの物流を担う宅外便は、大きく幹線輸送とラストワンマイルを含む配送に分けられますが、幹線輸送は輸送距離が長いがエネルギー消費原単位は良く、配送は輸送距離が短いがエネルギー消費原単位は悪くなります。おおむね配送で40~50%のCO2排出量が発生していると言われていますが、本試算では、報告値の40%がラストワンマイルの配送で排出しているCO2と仮定
・使用車両は軽貨物車(燃料:ガソリン)か、小型車(燃料:軽油、最大積載重量2,000kgまで)の2車種を使用すると仮定
・改正省エネ法の告示から貨物自動車の車種別の平均燃費を設定し、CO2排出係数を乗じた走行距離当たりのCO2排出量の数値から、総走行距離を推計
・自動車輸送統計から車種ごとの実働1日1車当たり走行キロと総走行距離から1日に必要な車両台数を(=ドライバー数)を推計

◎貨物自動車の平均燃費
・燃料種は軽自動車をガソリン、小型車を軽油に設定します。小型車は最大積載量1,000kg未満と1,000kg以上2,000kg未満の2つの区分があるので、2区分の平均値を採用します。

出所:省エネ法告示、燃費法:別表第2【自動車の燃費】

◎燃料のCO2排出係数

出所:環境省(算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧、令和5年12月12日更新)

◎実働1日1車当たり走行キロ

出所:国土交通省、自動車輸送統計年報(2023年度)

◎試算パターンについて
・アマゾンは、Amazon フレックスと呼ばれる個人事業主ドライバーと業務委託契約を結び貨物運送事業とは違う業態で配送する場合があるので、Amazon フレックスは自家用と考えます。
・このAmazon フレックスの割合や、使用している車種の割合が分からないので、いくつかのパターンを設定して試算します。また、使用する自動車の燃費基準の適用状況によって省エネ法の告示の燃費が変わってきますので、2015年基準と2022年基準を採用し、下記10パターンを試算します。

◎試算結果
(パターン1のみ詳細な試算結果を示し、その他のパターンは台数の結果のみ示します。)
・パターン1(軽自動車100%、貨物運送事業者100%、燃費基準2022年適用)試算結果

・1日当たり必要台数の試算結果(=必要なドライバー数)は下記のとおり。
・本試算ではCO2排出量を基礎として計算しているので、自動車の燃費が良い方が、走行距離及び総走行距離が長くなり、必要な車両台数が増える結果となります。
・配送車両は軽自動車が多くを占めると考えられることから、すべて小型車となるパターン5~8よりも、パターン1~4に近いと推測します。また、小型車を使用したAmazon フレックスの割合はそれほど高くないと推測しますので、パターン9・10とパターン1~4の間のレベルになるのではないかと考えます。
・まとめると、アマゾンのラストワンマイルの配送に必要なドライバー数は、25,000~40,000人/日程度の範囲と推測され、道路貨物運送事業でドライバーとして従事する方の約3~5%に相当する試算結果となりました。1事業者が必要とするドライバー数としては、かなり多いのではないでしょうか。

◎道路貨物運送業のうちの自動車運転従者数

出所:第1-4-1図 トラックドライバーの就業者数の推移(内閣府、地域の経済2023)

・以上、限定的なデータと仮説による試算ではありますが、ドライバー不足へのECの影響は大きいのではないかと考えます。アマゾンにおいても、Amazonプライムで多く会費を払った方に優先的に届けるなどのメニュープライシングが実施されていますが、ブラックフライデーなどでECの需要が多くなることに対応するためには、ドライバーの確保に必要な対策を実施する必要があると考えられます。
・具体的な対策としては、Amazon フレックスと呼ばれる個人事業主ドライバーで今後の需要に対応するのであれば、報酬の引き上げや労働時間の適正化などにより働きたいと思える環境を提供することや、配送の効率化の取組が必要になると考えられます。配送の効率化については、再配達の削減等、消費者と連携した取組が必須で、消費者の行動変容を求めていくことも重要になります。
・従って、多くのドライバーを必要とするECによるラストワンマイル配送において、ドライバー不足による注文した商品等が届かない事態を招かないために、国が進める置き配や、「ぽちっ」としてもその都度届くのではなく、エリアごとに決められた曜日だけまとめて届くことを許容した配送効率の向上など、ECを利用する消費者の意識改革を図るとともに、配送ロットをまとめるようなメニュープライシング(従事者の増収を含む)等への取り組みを、さらに推進していかなければならないのではないでしょうか。

(この記事は2025年12月22日の状況をもとに書かれました。)

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