中国物流機器メーカーの日本進出最前線

はじめに
日本の物流業界は、慢性的なドライバー不足やEC需要拡大を背景に、省人化・自動化が急務となっています。その中で注目されるのが、中国発の物流機器メーカーです。近年は、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)といったロボットを中心に、日本国内ですでに数百拠点・数千台規模の中国製機器が稼働していると言われています。
さらに、2025年9月に開催された「国際物流総合展」では、DAMON、GINFON、GURKIといった中国の有力メーカーが単独で出展し、コンベヤ、ソーター、包装機器といった日本メーカーが主力事業としてきた領域への進出も本格化しています。本記事では、こうした中国メーカーの日本進出の最新状況を、日本法人の設立や代理店の動向、さらには導入時に検討すべき法規制やサポート体制の観点から整理します。
中国メーカーの日本法人進出状況
中国の物流ロボット市場は2010年代後半から急成長を遂げています。アリババやJD.comといったEコマースの爆発的成長に伴い、倉庫内作業の自動化が急務になったことや、国家主導の産業育成政策に基づき、ロボティクス・AI産業に多額の投資がなされたことが背景にあります。またモーターやバッテリーなど主要部品を国内調達できるためコスト競争力が高くグローバル市場においても価格優位性があるためです。現在、中国国内のAGV/AMR市場規模は年率20%前後で拡大しており、世界シェアの約40%を占めるとされています。
2010年代後半から2020年代に入って以降、中国大手メーカーの中には、日本市場に本格的に取り組むために日本法人を設立する事例が増えています。代表的な日本法人を持つ中国のマテハン機器メーカーの代表例を下記の表に示します。
図表:1 日本法人を持つ中国物流機器メーカー(代表例)
名称 | 会社名 | HP |
Geek+ | Geekplus Co., Ltd.(Geek+ Japan) | https://www.geekplus.jp/ |
HAI ROBOTICS | Hai Robotics JAPAN Co., Ltd. | https://www.hairobotics.com/jp/ |
Quicktron | Quicktron Japan株式会社 | https://www.quicktron.com.cn/web/index/ |
ForwardX Robotics | ForwardX Robotics Japan | https://www.forwardx.com/jp/ |
Mech-Mind | Mech-Mind株式会社 | https://mech-mind.co.jp/ |
HIKROBOT | Hikrobot Japan 株式会社 | https://www.hikrobotics.com/en/ |
DAMON | DAMON JAPAN Technology Co., Ltd. | https://www.damon-group.com/ |
中国メーカーのすべてが日本法人を持つわけではありません。代理店経由の展開も広く行われています。AGV・AMRを中心に輸入販売を担い、日本の顧客向けに仕様調整を行う専門商社から、大手物流機器商社が国内外の複数のメーカー製品を組み合わせて提案するかたちでの日本国内への浸透も継続的に行われてきました。代理店によるカスタマイズ・サポート:現場に合わせたソフト連携、定期保守サービスを提供するなど日本国内でのビジネスにおいて導入のしやすさがあると思います。一方で中国製品に限らず海外製品の日本国内での展開においては、様々な観点での比較検討の上での導入が欠かせません。
特に物流機器の導入には、建築基準や労働安全衛生法への適合を前提として、日本市場での施工・保守体制についても対応状況を確認していく必要があります。例えば、日本進出している中国メーカーにおいては、機械器具設置工事業の許可を日本法人として取得している場合もありますし、日本の代理店を元請として導入施工を行う場合も多くあります。下記に物流センターで自動化設備を導入するにあたって確認すべき関連する許認可や規制を例示します。
図表:2 物流設備機器に必要な許認可・安全管理
物流機器を導入する際に検討すべき事項
中国メーカーに限らず、海外メーカー製物流機器を選定する際には、まず会社そのものや製品の基本的な信頼性を確認することが不可欠です。企業の資本力、技術開発の継続性、既存の導入実績、第三者認証の取得状況などは、長期的な稼働を見据えた際の安心材料となります。特に物流現場で24時間稼働する機器においては、単なる価格競争力だけでなく「止まらない仕組み」を担保する製品設計や品質保証体制が重要です。
一方で、導入後に直面する課題の多くは「サポート体制の有無」に起因します。稼働中のトラブル発生時に迅速な対応が可能か、部品供給のリードタイムは十分か、日本語でのヘルプデスクがあるかといった点は、現場の運用を左右する大きな要因です。代理店経由の場合にはサポート範囲が不明瞭になりやすく、日本法人がある場合でも、技術者派遣の可否や拠点網のカバー範囲を確認する必要があります。
最終的には、製品の初期価格に加えて導入後の保守契約費用、トラブル発生時のダウンタイムコスト、教育やマニュアル整備にかかる運用負担などを含めた総合的なTCO(Total Cost of Ownership)で判断することが求められます。短期的にはコスト削減効果が期待できても、サポート不足により稼働率が低下すれば逆に費用が膨らむ可能性もあります。信頼性とサポートを両輪で検討することが、海外メーカー製物流機器を安心して導入するための鍵といえるでしょう。
図表:3 海外メーカーの物流機器を導入する際に検討すべき事項
まとめ
中国の物流自動化企業は、日本の十倍ともいわれる中国の国内市場で鍛えられたスピード感とコスト競争力を武器に、製品品質を高め世界市場でのソリューション展開を急速に進めています。AGV・AMRに加えてソーターや包装機器といった物流工程全般に対応領域を拡大し、日本市場での存在感も急速に高まってきています。日本法人設立や建設業許可取得によって、国内での導入にあたっての信頼性を高める動きも見られ価格や納期だけでなくアフターサポート・法規制適合・TCOにおいても日本国内でのビジネスに適合しようとしてきています。
今後、日中両国の物流業界の連携が進む中で、中国メーカーの日本進出はさらに拡大する見込みです。国内物流企業にとっては、これらの機器をいかに自社の戦略やオペレーションと結びつけるかが大きな課題となるでしょう。
おわりに
当社では、中国メーカーを含む国内外のマテハン機器・物流ロボットの最新動向を踏まえ、お客様の事業環境に適した導入企画や運用設計のご支援が可能です。単なる製品導入にとどまらず、現場オペレーションとの適合性検証、法規制や許認可対応の整理、導入後の効果測定まで一貫したノウハウを提供します。AGV・AMRをはじめとした自動化ソリューションの比較検討や評価においても豊富な知見を持ち、最適な選択肢をご提案できます。物流DXを推進される企業様にとって、安心してご相談いただけるパートナーでありたいと考えています。
(この記事は2025年9月19日の情報をもとに書かれました。)
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