作業時間計測ツール「じょぶたん」は建設業界でどのように活用されているか?
          はじめに
建設業界では働き方改革関連法により残業時間の上限規制が適用される「2024年問題」に対応しなければいけないということで、2020年以降から残業時間と休日出勤の削減、有給休暇の取得促進に取り組む建設会社が増えてきました。しかしながら、国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となる2025年を迎えてもなお、技能者の高齢化による退職と後継者不足で現状維持すら難しく、残業時間削減の対策を講じることができない建設会社も多く存在しています。
残業時間削減と有給休暇の取得促進をする前に従業員達が残業時間にどんな仕事をしているのか、休日出勤をしてどんな仕事をしているのかという現状把握が不可欠ですが、建設現場に直行直帰する従業員、コロナ渦以降は在宅勤務で見積もり・設計業務をする従業員が多く、建設業界では従業員の勤務実態が掴みにくいという課題があります。
このような状況の中、スマートフォンによる作業時間計測ツール「じょぶたん」を活用して、現場作業、事務作業の実態を正確に把握して、業務改善に取り組んだ建設会社が存在します。本稿では建設業界での「じょぶたん」の活用事例を紹介します。
第一交易様: 建設工事管理者の残業時間の作業内容を把握して業務改善に取り組む!
最初に紹介するのは内装・外装工事・リフォームを行っている富山県の第一交易様です。新しい基幹システムの導入に際して、現場業務から事務作業を内製化する必要があり、現状の勤務実態を把握する目的で「じょぶたん」を導入しました。
計測期間を分けて「建築工事管理」「建築事務」「積算・検査」「工場」「総務部」の5部門の作業時間計測を実施。下記は建築工事管理部門の「じょぶたん」の計測画面です。4画面で約50の計測作業項目を設定して計測しました。
図①「建築工事管理」部門のじょぶたんスマホ画面(4画面)
建設工事管理部門の計測結果から管理者が残業時間にやっている仕事のほとんどが事務作業だということが判明しました。管理者の事務作業はできるだけ建築事務部門の担当者に振って、管理者の負担を減らして残業時間を減らす改善に取り組みました。これまでは1つの受注案件を管理者が事務作業を含めて一人でやりきるという体制でやっていたそうですが、新しい基幹システムは分業体制を想定したものなので、一人ですべての仕事を抱え込むのでなく、他の部門に仕事を振ることができるようにする、他の部門で初めてその仕事をする人が間違いを起こして出戻りすることがないようチェックリストを作成して、今できないことを普通にできるようにするための教育に力を入れたそうです。
また特定の部門で移動時間の割合が多いことも判明しました。原因を調べたところ、コロナ禍以降の勤務体制の変更が影響していて、3拠点あるうちのどこに出勤しても良いということにしたので、自宅から近い拠点に出勤してから拠点から遠い現場に移動する人がいて、今までよりも現場移動の時間が長くなっているケースがあることもわかりました。
第一交易様では計測作業項目を設定する際に「社外作業」と「社内作業」の2つの大区分を作って計測をしました。個人別に社外・社内の作業時間の比率を見たところ、現場によく行ってお客様とよく話している人と事務所から出ずに社内で仕事をすることが多い人が明確になったそうです。現場に行かなくても回していける要領の良さも大事ですが、お客様とよく話すことで次の仕事につなげていくことも重要で、以前からこの人はこういう働き方をしているのではないかと思っていたことが、データを見るとそれが如実に反映されていたとのことです。
第一交易様の導入事例の詳細はこちらでご覧いただけます。
タナベコンサルティング様: 建設会社の生産性向上支援コンサルティングで「じょぶたん」を徹底活用!
建設会社の生産性向上支援コンサルティングで「じょぶたん」を利用しているタナベコンサルティング様の事例を紹介します。
タナベコンサルティング様は2024年問題が話題になる前から建設会社の生産性向上支援コンサルティングを多く手掛けていました。クライアントの従業員たちの業務実態を把握するために以前は従業員の方々にエクセルのワークシートにその日にやったことを入力してもらって、その結果を集計していたのですが、従業員の方々にそのような負担をかけるのは申し訳ないということで「じょぶたん」を導入したところ、従業員の方々の負担だけでなく、データ集計も迅速にできて、クライアントがなんとなく感じていた問題点をより正確にデータで裏付けできるようになったとのことです。クライアントからも受けが良く、企画書の提出時から期待感を持ってもらえるとのことで、今でも多くのコンサルティングでご利用いただいています。以下は建設会社A社の作業時間計測での「じょぶたん」の計測作業項目の画面です。
図➁ 建設会社A社での「じょぶたん」作業項目ボタン(2画面)
建設会社A社のコンサルティング業務では27カ所の現場の約70名の従業員を対象に「じょぶたん」で時間計測を実施しましたが、計測対象者の残業時間が恒常的に多く、1日平均12.5時間も勤務していることが明らかになりました。中には1日平均15時間を超える従業員もいました。
計測結果から現場の所長クラスが管理業務でなく作業ベースの仕事をたくさんやっていたという実態が浮き彫りになったそうです。所長クラスが作業ベースの仕事にやっていることはなんとなくわかってはいたのですが、「じょぶたん」による計測前はそれを裏付ける数値データがありませんでした。所長クラスが作業ベースの仕事をするのは悪いことではないのですが、「時間をかけすぎているのではないか」「本来の仕事ができていないのではないか」という課題が明確になりました。
所長クラスは「現場管理」や「教育」がメインの仕事なので、「教育」というボタンを設定したところ、このボタンを押した所長は1名だけで、「現場作業」や「図面作成」に追われて「教育」の時間が取れていないことが判明しました。「図面作成」はA社では本来所長クラスでなく主任クラスがする作業で、主任クラスのスキルを上げることが所長クラスの仕事ですが、下が育ってないから所長が図面を書かなければいけない、図面を書いていると部下に教える時間がない、そういう悪循環がデータから見えました。
他の建設会社では、所長が全て図面作成・チェックを担当するのではなく、所長の指示のもと、本社のCADオペレータが修正して、所長や主任がチェックするという方法で分業してうまく効率化しているので、タナベコンサルティング様はA社に分業の提言をされたそうです。
タナベコンサルティング様の導入事例の詳細はこちらでご覧いただけます。
おわりに
本稿では文字数の関係で紹介できませんでしたが、「じょぶたん」はスーパーゼネコンの大林組様、大和ハウスグループの大和リース様でもご利用を頂いています。他の事例につきましては「じょぶたん」のHPをご覧下さい。
「じょぶたん」をご利用いただいた建設会社様から建設会社向けの作業項目のテンプレートを作って欲しいというご要望が多かったので、これまでの導入実績を元に「建設会社向けの作業項目テンプレート」を作成して「じょぶたん」に標準装備しました。
「現場作業」と「事務作業」の2つを大きな括りとして、「現場」では「墨出し」「工事写真撮影」「施主対応」「終業・残火確認」などの28項目、「事務作業」では「施工計画」「工程表作成」「安全書類作成」「材料費調査」「積算手配」などの34項目、合計62項目の計測作業項目があります。
図③ 建設会社向け作業項目テンプレートでのサンプル画面
このテンプレートは基本的な建設現場の業務を網羅しており、作業項目の追加・変更・削除するだけで、簡単に自社の計測作業項目の作成ができます。
本稿を読んで「じょぶたん」に興味を持たれた方はぜひ当社のHPよりお問い合わせ下さい。オンライン会議システム(Teams/Zoom)で詳細の説明をいたします。
(この記事は、2025年8月18日時点の状況をもとに書かれました。)
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