「ゲームから学ぶ倉庫効率化術 在庫・空間・動線を最適化する方法」

1.はじめに
倉庫内物流の効率化と聞くと、「在庫管理システム」「動線設計」「自動化設備」など、専門的で堅い話になりがちです。しかし、効率化の本質はもっとシンプルで、「限られた資源をどう使うか」という戦略にあります。
そしてその戦略は、私たちが日常的に楽しんでいるゲームの中にもたくさんのヒントが隠れています。
ゲームでは、限られた時間や空間、キャラクターやアイテムを最大限活用して、勝利や高得点を目指します。これは倉庫の現場で、限られたスペースや人員、作業時間を使って出荷をこなすことと非常によく似ています。
例えば、ゲームで「次の一手」を考えるとき、プレイヤーは現在の状況を把握し、最適な行動を選びます。倉庫でも同じく、現状を正確に把握し、改善案を立て、効果を比較評価するというプロセスが必要です。
このプロセスは、ゲームの戦略思考とほぼ同じ構造を持っています。
今回は、人気ゲーム「ポケモン」「テトリス」「スイカゲーム」「Factorio(ファクトリオ)」を例に、ゲームの中の戦略や工夫を倉庫内物流の改善にどう活かせるかを、管理者視点でわかりやすく解説します。
2.ポケモンから学ぶ「ボックス内管理と在庫配置」
世界的に有名なゲーム、ポケモンでは、捕まえたポケモンを「ボックス」に整理して保管します。ボックスは限られた枠の中で、タイプや用途ごとに並べ替えが可能です。例えば、バトル用、育成中、観賞用など目的別に分けておくと、必要な時にすぐ取り出せます。
しかし、何も考えずに捕まえた順にポケモンを入れていくと、「どこに何がいるのか分からない」という事態が起こります。
例えば、炎タイプを探しているのに、ボックスのあちこちに散らばっていて、探すだけで時間がかかる。進化させたいポケモンも、育成中のポケモンも、レアなポケモンも混在してしまい、目的のポケモンを見つけるまでに何十秒もかかってしまいます。
これは倉庫の在庫管理と非常によく似ています。倉庫でも、ロケーションを設定していなければ、探す時間が増え、作業効率が低下します。逆に、出荷頻度やサイズ、重量などの条件で分類し、棚やエリアを分けて整理することで、ピッキング時間を短縮できます。
ポケモンのボックス管理は、単なる整理ではなく「使う時の利便性」を考えた配置が重要です。管理者は、現場の在庫配置を定期的に見直し、動線や作業時間のデータをもとに最適化することで、全体の効率を高められます。
図1. ポケモンボックス内イメージ どこに何があるかわかりますか?
https://www.pokemon.co.jp/ex/pokemonhome/ja/howto/より抜粋
3.テトリス/スイカゲームから学ぶ「スペース活用」
世界的に有名なパズルゲーム、テトリスは、形の異なるブロックを隙間なく積み上げることで高得点を狙います。
昨今人気のカジュアルパズルゲーム、スイカゲームでは、大小さまざまなフルーツをうまく重ねてスペースを効率的に使い、大きなスイカを作ることで高得点を目指します。 どちらも「限られた空間をどう使うか」が勝敗の鍵です。
何も考えずにブロックやフルーツを置いてしまうと、すぐに問題が発生します。
テトリスでは、形を合わせずに積むと隙間だらけになり、置けるスペースが急速に減ってゲームオーバーになります。
スイカゲームでは、大きなフルーツを置く場所がなくなり、成長させたいフルーツを合体できずに早期終了してしまいます。
これは倉庫でも同じです。棚やパレットの配置を考えずに商品を置くと、空間に無駄が生まれ、保管量が減ります。さらに、取り出しにくい場所に商品が置かれることで、作業時間が増え、スタッフの負担も大きくなります。
逆に、商品サイズや形状に合わせて棚割りを行い、同じサイズの箱をまとめて積むことで隙間を減らせます。また、重量物は下段、頻出商品は手前に置くなど、取り出しやすさを考慮した配置が重要です。
また、パズルゲームでは、NEXT(ネクスト)を見ることがとても重要です。倉庫業務でも、事前に入荷する商品がわかるだけで予定を立てやすくなるでしょう。NEXTが有るか(入荷予定が有るか)、どこまでNEXTを見られるのか(何日前にもらえるか)、で難易度が大幅に変わります。スケジュール管理も重要な要素だと自然に身に付きます。
図2. テトリスイメージ NEXT(予定)を見て配置(保管)する
https://www.youtube.com/watch?v=rIhk2c1qgu4&t=2sより抜粋
図3. スイカゲームイメージ 左下のリンゴが取り出せない!
https://www.youtube.com/watch?v=Cw_NWPhvAm4&t=9sより抜粋
4.Factorioから学ぶ「動線設計と自動化」
世界的に人気のシミュレーションゲーム、Factorioは、資源を集め、工場を作り、効率的な生産ラインを構築するゲームです。プレイヤーは資源の運搬ルートや機械の配置を最適化し、ボトルネックを解消します。倉庫内物流の効率化を自然と学ぶことのできる、集大成のゲームと言っていいでしょう。
例えば、動線を考えずに機械を配置すると、資源の運搬ルートが遠回りになり、機械間の距離が長くなって生産が遅れます。
比喩するまでもない、あきらかに効率化を考えなければならない事象ですが、強いて倉庫内で例えると、「入荷から出荷までの動線が複雑で、作業者の移動距離が長くなり、時間と労力が無駄になる」ことと同義です。
倉庫では、商品の流れを全体で俯瞰し、最適最短ルートを設計することが重要です。入荷から検品、保管、ピッキング、梱包、出荷までの動線を見直し、無駄な移動や待ち時間を減らすことが肝要です。
また、コンベアやAGV(自動搬送車)、バーコードスキャナーなどの自動化設備を導入することで、作業時間を短縮し、人的ミスを減らせます。
Factorioでも同じように、各工程を自動化、より生産性を高め、「全体の流れを最適化する」ことが、倉庫効率化の大きな成果につながります。
図4. Factorioイメージ インフラ設計・自動生産ラインまで楽しんで学べる!
https://www.youtube.com/watch?v=OiczN-8QKDA&t=1sより抜粋
5.まとめ
倉庫効率化は、在庫・空間・動線という3つの要素を最適化することで大きく改善できます。そして、その改善のヒントは、私たちが日常的に楽しんでいる身近なゲームからも学ぶことができます。
ポケモンのボックス管理は、在庫を分類し、必要なものをすぐに取り出せる配置の重要性を教えてくれます。
テトリスやスイカゲームなどのパズルゲームは、限られた空間を無駄なく使うための配置術や、次の動きを予測してスペースを確保する発想を与えてくれます。
Factorioは、全体の動線を俯瞰し、ボトルネックを解消するための設計や自動化の効果を示してくれます。
これらのゲームに共通するのは、「限られた資源を最大限活用するための戦略的思考」と「成果をスコアとして可視化する」ことです。ゲームでは、プレイヤーが行動の結果をスコアやタイムで確認し、次の挑戦に活かします。倉庫でも同じように、改善前後のピッキング時間、移動距離、保管量などを数値化すれば、現場全体で「スコアアップ」を目指す感覚で改善に取り組めます。(このような概念はゲーミフィケーション(gamification)とも呼ばれています)
さらに、改善・効率化は一度きりの施策では終わりません。ゲームのように「次のステージ」が常に存在し、環境や条件の変化に応じて新たな課題が現れます。そのたびに現状を分析し、戦略を練り直し、スコアを更新していくことで、倉庫は継続的に進化していきます。
管理者は、このゲーム的な考え方を基に改善策を立てることで、現場の効率を高められます。ゲームを例にして説明すれば、専門用語に馴染みのない現場作業者にも直感的に理解してもらいやすく、改善活動への参加意欲も高まります。スコア化された成果は、チームの達成感を生み、次の改善ステージへのモチベーションにもつながるでしょう。
改善・効率化を進める際は、ぜひ身近なゲームの発想とスコアの概念を取り入れ、現場全体で楽しみながら改善を進めてみてはいかがでしょうか。
(この記事は2025年9月30日時点の状況をもとに書かれました。)
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