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物流業界において活用が期待されるAIカメラ

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1 はじめに

今日、物流業界では、深刻な人手不足、物流関連費用の増加、時間外労働の上限規制等に対応するため、AIカメラを活用した物流業務の効率化が期待されています。
ここでは、AIカメラの定義、AIカメラの種類、物流センターにおいてAIカメラの活用が期待される物流領域を紹介して、最後にAIカメラへの期待を整理します。

2 AIカメラとは

はじめに、AIカメラの定義を確認します。多数の定義者による様々な定義が存在しますが、本稿ではAIカメラとは、「AIを活用して映像または画像を自動で分析するカメラ」と定義します。
AIカメラには、大きく分けると2つの種類があります。
1つ目は、エッジAIカメラです。エッジAIカメラとは、AI処理機能を内蔵したカメラのことです。英単語の“edge”は縁や端などと訳されますが、IT業界では端末や機器などを意味します。
2つ目は、クラウドAIカメラです。クラウドAIカメラは、カメラで撮影した映像や画像をクラウド上で画像処理することが特徴です。
続いて表1でエッジAIカメラとクラウドAIカメラのメリットと課題について、整理します。

表1 エッジAIカメラとクラウドAIカメラのメリットと課題

表1 エッジAIカメラとクラウドAIカメラのメリットと課題
出所:各種資料よりNX総合研究所作成

エッジカメラの特徴を表1左側に整理しています。例えば、物流センターで撮影した画像や映像を用いてAIカメラで可視化を検討するトライアルや実証実験を行う際、リアルタイム性、高セキュリティ、設置の容易性、拡張性を満たすエッジカメラは、すぐに、気軽に試すことができるため、物流現場で導入しやすいツールです。

また、表1右側でクラウドAIカメラの特徴をまとめています。使い方の例としていうと、大規模な物流センターでは、撮影するべき範囲が広いため、多数のクラウドAIカメラを設置する必要があります。市販の汎用的なカメラを購入および設置後、その映像や画像は外部のデータセンターにおいてクラウド上で画像認識処理を行うことで、大規模な画像処理に対応可能であり、かつハードウェアの初期投資を抑えることが可能です。

3 物流センターにおいてAIカメラの活用が期待される物流領域

ここでは、物流センターにおいて、AIカメラの活用が期待される三つの物流領域について、ご紹介します。
第一は、トラック車両のナンバープレート認識です。大規模な物流センターでは、24時間、365日、多数のトラックやトレーラーが入退場します。従来の有人受付では、物流センターの受付前において、待機車両が周辺道路まで長く続くことで、周辺道路の交通渋滞や路上駐車などの問題が発生しました。
入退場口にAIカメラを設置して、すべての入退場車両のナンバープレートを撮影し、画像から車両のナンバープレートの文字情報を認識することで、有人受付を廃止して、入退場車両の自動受付を実現しました。入退場時刻だけでなく、他のシステムと連携することで、積み降ろし時刻、待機時間を自動記録することも可能です。
車両のナンバープレート認識は、受付業務の効率化だけでなく、物流センター周辺道路における入場待ち車両の削減、待機時間の削減、セキュリティ強化、入退場車両のトレーサビリティの強化につながります。
第二は、物流センターにおける入出荷バースにおける満空認識です。入出荷バース管理業務とは、バースの空き状況を目視で確認して、担当者が空きバースに車両を誘導する煩雑な業務です。
従来の運用では、完全な有人管理であるため、効率化および効率化の余地は少ないと言えます。また、物流センターの構造上、リアルタイムの車両の駐停車状況を把握することは容易ではなく、入出荷バースの回転率が低い運用も見られました。
AIカメラの活用により、トラックの空車、駐停車の状況を自動認識することが可能です。
AIカメラの導入により、満空精度の向上、リアルタイムの可視化、車両回転率の向上、駐停車実績時間の実績データを活用することの効率化などが期待できます。
第三は、AI OCRによる文字情報の自動認識です。AI OCRとは、カメラで撮影した画像から文字情報を自動的に認識する技術です。OCRは、Optical Character Readerの略であり、光学的文字認識と訳されます。物流センターでは、荷主や顧客が発行する入荷伝票や納品書、請求書等の多数の紙の帳票類を扱います。
また、商品のダンボールには、ケース単位の商品確認は、ITFシンボルなどのバーコードの読み取りでおこなわれますが、期限情報(賞味期限、消費期限、使用期限、有効期限)はバーコード化されていないことが多いです。そのため、現状では、ダンボールに印字されている期限情報の文字列を目視確認後、ハンディスキャナ等に手入力することで、倉庫管理システムに取り込まれる運用も見られます。
これらの帳票類やダンボールの文字列をAI OCRで認識することで、読み取りミスや入力ミスの削減、作業時間が短縮することで、業務の効率化が期待できます。

4 AIカメラと作業時間計測ツールの併用による詳細な作業時間の計測

AIカメラを用いることで、物流センター内の作業状況、車両の入退場、帳票類やカートの文字情報をAIカメラで把握することで、物流現場の可視化が可能です。AIカメラは物流現場を可視化するツールとして、実務的に便利なソリューションと言えます。
次に、詳細な作業時間を計測可能ツールである「ろじたん」について紹介致します。
現状、当社のろじたんサービスは、作業時間を可視化するツールとして、多数の現場で利用されております。
図2にろじたんサービスの概念図を示します。ろじたんの端末には、スマホ端末およびタブレット端末の2種類あり、特に大規模な物流拠点では、タブレットを利用する拠点も見られます。

図2 ろじたんの概要

図2 ろじたんの概要
出所 https://www.logitan.jp/

ろじたんを用いることで、管理者や計測者が求める任意の作業粒度で計測が可能です。
また、ろじたんには、15種類のテンプレートが準備されているため、準備も簡単です。
現状では、ろじたんは、スマホ端末およびタブレット端末を用いて、作業スタッフが作業ボタンを押すことで作業内容を記録する方式を採用しています。
現在、NX総合研究所と東京海洋大学は、倉庫内作業時間の自動計測を目指して実証実験を行っています。
将来的には、ろじたんのスマホ端末の画面をタップせずに、AIを用いて、スマホ端末を携帯するだけで、物流現場の作業を自動計測することを目指しています。

NX総研と海洋大学のろじたんの共同研究イメージ

NX総研と海洋大学のろじたんの共同研究イメージ
出所 https://www.logitan.jp/archives/1775

今後、ろじたんの自動計測機能およびAIカメラの滞在人数カウント機能等を併用することで、、物流現場の作業スタッフは作業中にスマホ端末の操作が不要となり、いままで以上に作業スタッフの計測負荷を低減した現場の可視化の実現が期待されます。

5 さいごに

本稿では、AIカメラの定義、AIカメラが活用される物流領域について紹介しました。
今後、AIカメラが普及により、ハードおよびソフトの性能向上、価格が低減することで、物流センター業務の効率化、品質向上、作業精度の向上の実現が期待されます。
おわりに、当社は、2023年4月に、AIカメラを購入し、AI画像認識ソフトウェアを用いて、当社会議室内においてAI画像認識の精度について検証しました。その背景と目的、AIカメラおよびソフトウェアの概要、実証実験の結果および考察は、当社のWEBサイトにおいてご提供する「お役立ち資料」にて、ご覧いただけます。
ご興味ある方は、以下の当社お役立ち資料「物流センターでの活用が期待されるAIカメラ」からダウンロードしてご確認ください。

以上

(この記事は、2025年6月30日時点の情報をもとに書かれました)

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